移動時間

移動中という時間は、ただ目的地へと運ばれていくだけのものではない。
むしろ私にとっては、意外なほど物事に没頭できる、静かな集中の時間だったりする。

とりわけ新幹線の中が好きだ。
規則正しく続くレールの振動、窓の外を後ろへと流れていく景色、ほどよく保たれた車内の温度や空気。そこには、日常とは少し切り離された独特のリズムがある。誰にも急かされないのに、確実に前へ進んでいく時間。その感覚が心地よいのだと思う。

ここ最近は、正直なところ余裕がなかった。
気がつけば移動中もパソコンを開き、資料を作ったり文章を書いたり、次の準備に追われていることが多い。車窓の景色に目を向ける余白もなく、ただ画面の中の文字や数字を追いかけている。そんな自分に、少し苦笑いをしたくなる瞬間もある。

けれど、本を開くこともある。
ページをめくるごとに、自分が今いる場所とは違う世界へ連れていかれる感覚は、やはり特別だ。高速で移動しながら、心は静かに立ち止まることができる。そんな時間が、移動という行為の中には確かに存在している。

忙しさの中でも、新幹線の座席に身を預けると、どこかほっとする。
前へ進みながら、自分自身と向き合える場所。
移動とは、本来そういう時間なのかもしれないな。

Previous PostNext Post

Related Posts