映画『ハムネット』を観た

映画『ハムネット』を観た。ハムレットではないことにご注意を。

いわゆる史実の再現ではなく、点在する事実の断片に想像力を重ねて紡がれたフィクションだ。ウィリアム・シェイクスピアの息子ハムネットの死、その出来事が、のちの名作『ハムレット』にどのような影を落としたのか。その余白を、丁寧に描いている。11歳の息子ハムネットを亡くしているのは史実だ。

正直に言えば、『ハムレット』の背景をまったく知らないと、少し距離を感じる部分もあるかもしれない。

物語は決してやさしい内容ではない。むしろ、胸を締めつけてくるような時間が続く。言葉にされない感情が、画面の奥に積もっていく。その重さが、観る側にも伝わってくる。

そして終盤。その積み重ねが、ひとつのかたちを持った瞬間、私は完全に心を持っていかれた。気づけば、涙がこぼれていた。

お芝居に関わる人間として、強く感じたことがある。作品というのは、ただ作られるものではなく、どうしようもない現実や感情の中から、絞り出されるようにして生まれるのだということだ。

『ハムレット』という作品の裏側に、もしこうした時間があったのだとしたらと思うだけで、その一行一行の重みが変わって見えてくる。

見終わった後、なんともいえない余韻に浸ることができた。良作だった。

Related Posts