本を読みたい

しばらく続いていた慌ただしさが、ようやく静まりつつある。張り詰めていた糸が、ふっと緩むような感覚だ。そんな隙間に、自然と「本を読みたい」という気持ちが入り込んできた。

間もなくゴールデンウィーク。移動の時間も長くなるだろう。その時間を、ただ流れていく動画に預けてしまうのは少し惜しい。ショート動画は時間泥棒で暇つぶしにはなるのは確かだが、見終えてから何も残らない。せっかくなら、もう少し密度のある時間にしたい。そう思って、先日、私は紀伊國屋へ足を運んだ。

本屋大賞の作品が並び、帯には「映像化決定」の文字が躍ってるものもある。流行りに乗るのも悪くない。ふと目に留まった作家の本を手に取り、ページをめくる。言葉のリズムや余白の取り方に、自分との相性を探るような時間が流れる。

気づけば、何冊かを抱えてレジに向かっていた。本屋という場所は不思議だ。ただ本を買うだけなのに、どこか満たされる。まだ読んでいないはずの言葉たちに、すでに出会ったような気さえする。

私は読書家とまでは言えない。それでも、本を読むことは意識していたいと思っている。読まなければ、言葉は増えないし、考えも広がらない。知識や教養というのは、いつの間にか身についているものではなく、どこかで意識的に手を伸ばした分だけ、自分の中に残っていくものだと思う。

ページをめくる時間は、どこか静かな対話に似ている。誰かの思考をなぞりながら、自分の内側も少しずつ形を変えていく。その変化は目に見えるものではないけれど、確かに何かが積み重なっていく感覚がある。

この連休は、その感覚をもう少し大切にしてみたい。急がず、焦らず、一冊ずつ。読み終えたあとに、ほんの少しだけ世界の見え方が変わっていれば、それで十分だと思う。

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