フェリーに乗っている。
陸を離れてしばらくすると、さっきまで見えていた街の灯りが少しずつ遠ざかっていく。
船の窓から海を眺めていると、不思議と時間の流れまでゆっくりになるような気がする。
車で走っていると、目的地までの距離や時間をどうしても意識してしまう。でも、船の上では急ぐことができない。ただ海の上を進んでいく。
それが、なんだか心地いい。
最近は、いろいろな場所を訪れ、たくさんの人に出会っている。そしてまた次の場所へ向かっている。
旅というのは、目的地に着くことだけが旅なのではないのだろう。
こうして海の上で、ぼんやりと過ごす時間もまた、旅の一部なのだと思う。
夜の海は静かだ。
遠くに見える灯りを眺めながら、これまでのことを少し振り返り、これからのことを少し考える。
陸を離れたからこそ、見えてくるものもあるのかもしれない。
今夜はもう少し、この船の揺れに身を任せていたいと思う。


