とあることがきっかけで、幼い頃のことに読んでいた本について考えていた。
普段はすっかり忘れていた記憶が、少しずつよみがえってくる。
そういえば、あの本が好きだった。
何度も繰り返し読んだ本があった。
夢中になった本もあった。
幼い頃は、もちろん、その本が自分の人生にどんな影響を与えるのかなど考えていない。
ただ面白いから読む。知らない世界を覗いてみたいから読む。それだけだった。
けれど、今振り返ってみると、そこで出会った言葉や物語、絵や世界観が、自分の中に少しずつ積み重なっていたのではないかと思う。
演劇という世界に入り、人の生き方や物語に興味を持ち、知らない文化や世界を知りたいと思うようになった。
その原点を辿っていくと、もしかすると幼い頃に読んだ本に行き着くのかもしれない。
人は、自分でも気づかないうちに、これまで出会ってきたものによって形づくられている。
本だけではない。誰かからかけられた言葉、見た景色、音楽、映画、旅、そして出会った人たち。
その一つひとつは、そのときには何気ない出来事だったとしても、長い年月を経て、自分という人間の一部になっているのだろう。
幼い頃に読んだ本を思い出していると、あの頃から変わっていないこともあるとも思った。
知らないものを知りたい。
想像することが好き。
物語の世界に入り込むのが好き。
そんな子どもの頃の自分が、形を変えながら、今の自分の中にもちゃんと残っている。
そう考えると、少し不思議で、そして面白い。
幼い頃に何気なくめくった一冊の本が、何十年も後の自分につながっている。
記憶の片隅に残っている本を、久しぶりに開いてみたくなった。


