何かを変えようとするとき、これまでは新しいものを足そうとしてきたように思う。
新しいことを始める。新しい知識を身につける。予定を入れる。人と会う。仕事を増やす。できることを増やしていく。
そうやって、自分を少しずつ大きくしていくことが成長なのだと思っていた。
けれど、最近は少し違うのではないかと思うようになった。
足すのではなく、引く。
やらなくてもいいことをやめる。必要以上に考えることをやめる。誰かの期待に応えようとしすぎることをやめる。予定を詰め込みすぎない。何かをしなければならないという感覚から、少し離れてみる。
そうすると、これまで見えなかったものが見えてくる。
余白ができるからである。
部屋も、物が多すぎれば本当に必要なものが分からなくなる。机の上も、余計なものを片づければ、今やるべきことが自然と見えてくる。
心も同じなのかもしれない。
何かが足りないから苦しいのではなく、いろいろなものを抱えすぎているから苦しいこともある。
「もっと頑張らなければ」
「もっと成長しなければ」
「もっと結果を出さなければ」
そんな言葉を、自分の中に積み重ねてきた。
だから、これからは少し引いてみようと思う。
もちろん、何もしないということではない。大切なことには、これまでと同じように向き合う。ただ、すべてを自分の仕事にしないことである。
できないことを手放す。
今ではないことを後回しにする。
自分でなくてもいいことは、人に任せる。
そして、何よりも、自分自身に「何もしない時間」を許してみる。
秋の風が少しずつ冷たくなってきた。
風は何かを足してくれるわけではない。ただ、滞っていたものを動かし、余分な熱を冷ましてくれる。
そんなふうに、自分の中にも風を通していきたい。
これからは、足していくことで自分を変えるのではなく、引いていくことで本来の自分に戻っていく。
そんな時間も、必要なのだと思う。




