多久ミュージカルカンパニー(TMC)では、演技のレッスンを定期的に行っている。ストレッチから始まる基礎練習では、体をゆっくりとほぐしながら、少しずつ今日の自分と向き合っていく。続いて、発声、滑舌、そしてコミュニケーションゲームへと進む。声を出し、笑い合い、時に真剣に向き合うその時間は、知らず知らずのうちに心の距離も近づけてくれる。
今日のテーマは「マイム」。
パントマイムをやっているわけではない。「見えないものを、あるように扱う」という演技の本質を実践する。
たとえば、何もない空間から「重い荷物」を持ち上げてみる。その重さを腕で感じ、腰で支え、表情で伝える。あるいは「熱い紅茶」を飲むのであれば、その湯気の立ちのぼる様子やカップの縁の熱さを感じる。目の前には何もない。でも、そこには確かに“何か”がある。自分の中の感覚が、それを生み出していく瞬間を作る。
演技というと、どうしても「セリフ」が中心と思われがちだ。言葉は確かに便利で、強い。でも、僕はまずは身体からだと思っている。身体が感じて、動いて、その先に言葉が乗る。その方が、ずっと説得力のある表現になると思っている。言葉に頼りすぎると、そこに甘えてしまう。でも、身体で伝えようとすると、感覚は研ぎ澄まされ、心は素直になる。「何もないはずの空間に、ちゃんと存在があることが伝わる」そんな手応えを感じてもらいたい。
演じるということは、不思議なことだ。レッスンを重ねるたびに、誰かが少しずつ輝きを増していく瞬間に立ち会えたりする。それが、僕にとっては何よりの喜びなのだ。