最高の形で手渡すために

だんだんと本番が近づいてくる。
空気が少しずつ変わっていくのがわかる。
その緊張を、悪くない。

ありがたいことに、仲間が観客席に座って見てくれる。
舞台に立っていると見えない景色を、正直に言葉にしてくれる。
それがどれだけ心強いことか。その視線に何度も救われている。

照明が当てられ、空間が少しずつ作品になっていく。
役者の息づかいが、光に照らされるだけで違って見える。
ここからは仕上げだ。削り、磨き、もう一段上を目指す。

お客様を迎えるその直前まで、踏ん張るしかない。
ほんの数ミリでも、ほんの一呼吸でも、良くなる可能性があるなら、そこに賭けたい。

今は長い時間をかけているように感じる。
何十時間も積み上げてきた。
けれど、幕が上がれば、それは一瞬だ。

本当に、一瞬だ。

だからこそ、尊い。
儚いからこそ、美しい。

演劇は、効率とは真逆の世界だ。
消えてしまうもののために、全力を注ぐ。
形としては残らないものを、本気で作る。

でも、その「この瞬間しか起きない」という性質こそが、たまらなく好きなのだろう。
二度と同じにはならないからこそ、おもしろい。

幕が上がるその瞬間まで、もう少しだけ、あがく。
この儚さを、最高の形で手渡すために。
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第5回目となる「猫を飼う」公演を予定している。今回は、なんと2本立て!違う役を演じ分けます。また、ピアニストの大坪健人さんとのコラボもお見逃しなく!!
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