いよいよ公演の週へ

ここまで積み重ねてきた日々を思うと、あっという間のようでいて、確かな重みがある。稽古での試行錯誤、仲間とのやり取り、そして幾度となく繰り返した台詞。どれもこの瞬間のためにあったのだと思う。

今はただ、身体と精神のコンディションを整え、心を澄ませて舞台に向き合うしかない。舞台に立つということは、常に自分と対話することでもある。どれほど準備をしていても、当日の空気、観客の息づかい、その一瞬一瞬の流れがすべてを変えていく。だからこそ、恐れと同じくらい、期待と高揚が胸を満たしている。

佐賀城での出演やイベントなど、年間を通してさまざまな場で演じる機会をいただいている。それぞれに意味があり、学びがある。だが、今回は久しぶりのホール公演。本格的な音響と照明に包まれ、舞台上で一人の役者として物語を生きることができる。その環境のありがたさを、改めて噛みしめている。

舞台の上で、役として呼吸し、声を届け、感情を動かす。そこに立つ自分を想像すると、緊張の奥に確かな喜びがある。観客の前で物語が息づく瞬間、それは何度経験しても新鮮で、そして尊い。

さて、この一週間、できることを丁寧に積み重ねて、舞台という“今”を生き抜きたい。

舞台「シン・ハリマオ」は、10月11日(土)と12日(日)の両日14時から、さざんぴあ博多の多目的ホールで上演される。会場は西鉄雑餉隈駅から徒歩2分、JR南福岡駅からも徒歩圏内というアクセスの良さを誇り、客席から舞台が間近に感じられる親密な空間である。

この舞台で描かれるのは、マレー半島を舞台に「義賊」として語り継がれた男、谷豊――後に“ハリマオ”と呼ばれた人物の人生である。1911年、福岡の理髪店の家に生まれた谷豊は、幼くして家族とともにマレーへ渡り、やがて妹の悲劇をきっかけに義賊としての道を歩み出す。弱き人々を救い、権力に立ち向かうその姿は民衆に希望を与えたが、時代は彼に苛酷な運命を強いた。

やがて日本軍の諜報機関に協力し、植民地支配や民族の対立の渦中で翻弄される彼の人生は、信念と裏切り、忠義と悲哀の狭間で揺れ動いていく。30代という若さでマラリアや栄養失調に命を奪われた後、人々は彼を「大東亜の英雄」と呼び、その名を伝説として語り継いだ。

観客の皆さまには、この二日間だけ体験できる特別な物語を、どうか一緒に見届けていただきたい。10月11日と12日、午後2時、さざんぴあ博多にて、皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

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