変わっていく

やっと、セミが一斉に鳴き始めた。

耳をつんざくようなあの声。少し遅いなと感じていた今年の夏。梅雨はあっさりと通り過ぎ、まるで助走もなく本番が始まったような、そんな唐突な暑さだった。僕は昔から、どんな季節でもきちんとジャケットを羽織るのが好きだった。でも、ここ最近の気温では、そのこだわりもあっけなく敗北している。

やっぱり、地球の温度は確実に上がってきている。そんな実感だけが、汗と一緒にじっとりと肌にまとわりつく。

実家の庭にも、変化は訪れていた。
スズメたちの姿が、いつのまにか見られなくなったのだ。どこへ行ってしまったのだろう。ふと思い出すのは、小学生のころ、庭で見つけた巣から落ちたヒナを助けて、世話をしたことがあった。そのことについて作文を書いたことも覚えている。

環境省の報告でも、スズメの数は全国的に減少しているとあった。僕たちが知らないうちに、彼らは静かにこの街から姿を消していったのだ。季節も、生きものも、そして人間の暮らしも、ゆっくりと、でも確実に変わっていくのだろう。

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