だからこそ価値があるのだ

テクリハを終えたら、いつの間にか夜になっていた。

外に出ると、昼間のざわめきはどこかへ消え、冷たい空気の中に街の灯りだけが浮かんでいる。長い1日だった。体の奥にじんわりと疲れが溜まっているのを感じながらも、どこか安堵のような感覚もある。

とにかく、ここまで漕ぎ着けた。
そんな言葉が、頭の中にゆっくりと浮かんでくる。

もちろん、まだまだだ。
課題はいくらでもあるし、「これで完璧だ」と言える状態にはほど遠い。それでも、ほんの少しだけ形が見え始めたことは確かだった。舞台の空気、照明の角度、役者たちの呼吸、音楽が流れるタイミング。バラバラだったものが、ようやく一本の線になろうとしている。

けれど、舞台というものは残酷なほどに時間を待ってくれない。
「もう少しだけ準備がしたい」と思っているうちに、本番は容赦なくやってくる。

ほんの少しの時間の隙間を縫うようにして、私たちは最後の調整を続ける。
修正しては試し、試してはまた迷う。その繰り返しだ。正解があるわけではないからこそ、決断するたびに不安も生まれる。それでも前に進むしかない。舞台は、生き物のように、その瞬間瞬間で姿を変えていくのだから。

今日のテクリハでは、思いがけない発見もあった。
団員も、スタッフも、保護者も、それぞれの持ち場で必死に向き合っている。
疲れているはずなのに、誰も手を抜こうとはしない。その姿を見るたびに、この時間は決して無駄ではないのだと思う。むしろ、こうして積み重ねてきた時間こそが、本番の数分間、数十分間を支えているのだろう。

舞台の世界にいると、時間の感覚が少しだけおかしくなる。
数ヶ月かけて準備してきたものが、本番ではあっという間に終わってしまう。拍手が鳴り止み、客席の灯りがついた瞬間、夢から覚めたような気持ちになることもある。

それでも、だからこそ価値があるのだと思う。
儚いからこそ、そこに全力を注ぐ意味がある。

夜道を運転しながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
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