時々、ふとした拍子に、かつて覚えたセリフが頭をよぎることがある。今日も何気ない会話の中で、記憶の中から引き上げられた言葉があった。
「ずっと悲しくていいよ。そしたらそのうち、悲しいのに慣れるから。悲しいまんまで、やっていけるようになる。」
なんとも切なく、だけどどこか静かに力をくれるセリフ。演劇をやる理由を問われたら、私はこう答えるかもしれない。忘れられない物語に出会うため。そして、心に残る言葉に出会うため。言葉には人を支える力があると、信じているから。
気づけば、18歳からずっと役者を続けてきた。セリフを覚え、それを自分の言葉として口に出してきた。そして今も、こうして舞台に立ち続けている。50歳になっても、変わらず。いや、セリフ覚えは少し怪しくなったけどね(笑)。でも、好きだから続けているわけじゃない。ただ、それが私の“普通”になったのだ。暮らしの一部として、呼吸をするように、舞台に立ち続けている。
さて、先週末に本番を終えたばかりだが、今度の日曜日にはまた別の舞台がある。地域のイベントで、すでにほぼ満席とのこと。ありがたいことだ。ならば、しっかり稽古をして、万全の状態で挑もう。舞台の上でまた、言葉と出会うために。