演劇ワークショップや演技レッスンのネタを考えることは、私にとってちょっとした冒険のようだ。いつも同じ答えがあるわけじゃない。けれど、その瞬間にしか生まれない何かを信じて、私は頭の中で風景を描く。
ときには準備していたプランを脇に置き、その場の空気を肌で感じて、流れるように進めていくこともある。参加者の表情、声のトーンなど、そういった小さなサインをキャッチして、次の一手を直感で決める。そんな時間は、自分自身が生き生きと呼吸しているのを感じる。今ここにいる自分を最大限に使っている実感があるのだ。
「これはうまくいくかもしれない」と思いながら投げかけた言葉が、思いがけず参加者の心に届く瞬間がある。目が輝き、身体が動き出し、場の空気がふっと変わる。その瞬間、私の中で何かが報われる。
でも、うまくいかないこともある。予定していた展開が響かないことも。でもそれでいいのだと思う。ワークショップとは完成された答えを与える場所ではなく、むしろ「一緒に迷って、一緒に探す」場なのだから。
ファシリテーターとして前に立つ私は、決して“教える人”ではなく、むしろ“ともに考える人”でありたい。問いを投げかけ、ともに悩み、ともに笑い合う。そんな関係性を紡ぐことが、私のやりたいことなのだ。
参加者の誰かが、自分の声に気づいたり、身体の感覚を再発見したり、あるいはただ「楽しかった」と言ってくれたりするだけで、私は救われる気がする。それだけで、また次のワークショップの構想が浮かんでくる。
演劇というのは、不思議な道具だ。人と人の間に置くことで、見えない壁をほどき、言葉にならない感情をそっとすくい上げる。日常では見過ごしてしまうような気づきを、さりげなく教えてくれる。だからこそ私は、この仕事を続けていきたいと思う。演劇を通して、人の内側に灯る小さな光を見つける旅を、これからも。