TMCで進めているミュージカルは、すでに立ち稽古の真っ只中だ。演技レッスンにも自然と力が入る。自分なりの演技論を語りながら、どうにかメンバーの殻を破り、彼ら自身も気づいていない“おもしろさ”を引き出せないかと考える。そこを突破できた瞬間、必ず成長につながると信じているからだ。時には熱が入りすぎてしまうが、それも必要だと思っている。
僕はずっと、演劇を「教育」だと捉えてきた。表現する術を身につけることは、人生のさまざまな場面で役に立つ。役者を目指すためだけのものではない。他者を演じるという行為は、「もし、私がこの立場だったら」と想像する力を育てる。普段しないような表現を敢えてやってみることは、自分の中にまだ眠っている可能性に気づくきっかけにもなる。さらに、作品をつくり上げていくプロセスには、他者と協力しながら物事に取り組む姿勢が自然と身につく。表現することを恥ずかしがらず、全力で挑む姿は、やっぱりかっこいい。
僕自身、18歳のときに演劇に魅了され、それ以来ずっとこの世界にこだわり続けてきた。恥ずかしがり屋で、口下手で、うまく自分の言葉を伝えられなかった僕が、演劇を学んだことで少しずつ人前に立てるようになった。そして今、教えるという立場の仕事に就けている。
もちろん、演劇がすべてを変えるわけではない。でも、人の内側にある“まだ使っていない力”を静かに揺り動かす、一つの確かな手段だと僕は思っている。
だから今日も、稽古場に立つ。
誰かの殻がふっと割れる瞬間を、信じて待ちながら。


