本日は多久市人権フェスタにお越しいただき、多久ミュージカルカンパニー「詩子の声」の公演をご覧いただき、心より感謝申し上げます。
僕はずっと、演劇公演を一つの「旅」と捉えている。特に新作を手掛ける時、その旅は冒険そのもの。物語の種が心の片隅で芽吹き、執筆や作詞という水を与え、作曲家の力で音楽という命が吹き込まれる。その旋律に声を乗せ、ダンスで動きを与え、稽古という道を何度も往復する。公演直前には、美術、音響、照明、そしてヘアメイクが加わり、物語はついにその姿を現す。そして公演当日、お客様が集うことで、この旅はクライマックスを迎える。
今回の作品も、5月の海辺でふと浮かんだアイデアが旅の始まりだった。それが形となるまでの長い道のりの中で、何が見つかるのか、どんな景色が広がるのか、最初は自分でもわからない。ただ歩み続ける中で、少しずつ明らかになり、ゴールが見え始める。そして、公演という舞台でお客様と出会うその瞬間、初めて完成を実感する。それは何物にも代えがたい特別な時間。舞台に立つ全員と、その場にいる皆さんで共有する一期一会の記憶となる。
中国の古いことわざに「真の旅人は行き先を知らない」という言葉があるが、まさにその通り。行き先など最初からわからない。ただ直感に従い、一歩を踏み出す。そしていつしか、想像もつかなかった場所にたどり着く。その過程で多くの人々の支えを受けるたび、感謝の気持ちが心に満ちてくる。
だからこそ、僕は何度でもこの旅に出たいと思うのだろう。未知の世界へと続く、この果てしない冒険に。